公共事業に対しての理解の不足
大阪万博“2億円トイレ”設計者、中抜き疑惑に反論「一般的なトイレの予算の基準を大きく下回っており」
大阪・関西万博の会場全景【写真:産経新聞社】
(ENCOUNT)
デザインコンセプトは「閉会後を見据え移設転用の機構を備え異なる場所でも形を変え長く使われ続ける仕組み」
「キャンプ場の仮設トイレに見える」と物議を醸している、4月13日に開幕する「大阪・関西万博2025」の“2億円トイレ”。設計者である一級建築士・米澤隆氏が16日にXで、工事金額の中抜き疑惑、デザインコンセプトについて説明した。
米澤氏は、「大阪・関西万博トイレ5に関しまして、部分的に切り取られた建築写真が流出し、安っぽい、工事金額を中抜きしているのではないかといった疑義がおこり、世間をお騒がせしてしまっています。設計者として説明させていただきます」と投稿の意図を明かした。
そして、Xで拡散されている写真については、「トイレ5建築の一部であり、実際には46基のトイレがあり添付写真のようであるということをお伝えさせていただきます」と説明。
簡素なデザインが批判されている点については、「一般的にトイレに2億円は高過ぎるのではないかという感覚があり、万博2億円トイレやデザイナーズトイレと称された言葉が想起させるリッチでラグジュアリーなトイレのイメージと実際にできた建築にギャップがあったことが要因であると考えています」とし、「実際のところは、吉村知事が『万博トイレ2億円! について説明します。まず小さいトイレでなく大規模トイレです。2箇所あり、平米単価は77万円と64万円です。建設物価調査会の調査では21〜22年の公共トイレ施設の平米単価は98万円です。』と説明されていましたようにこのような大規模なトイレに対する予算としては公共の一般的なトイレの予算の基準を大きく下回っておりリッチなものをつくるほどの余裕はありませんでした」と付け加えた。
「とはいえ半年だけの会期のために多額の費用をかけるのは経済的にも環境的にも負荷が大き過ぎるのではないかという問題意識には、私自身も設計当初から考えてきたものでもあり、おおかたのかたが批判されている内容に共感もいたします」と理解を示しつつ、「それに対して、お金をかけてリッチでラグジュアリーなものをつくるよりも(上記のとおりそもそもそのような余裕はありませんが)、簡素な素材ではあるが閉会後を見据え移設転用の機構を備え異なる場所でも形を変え長く使われ続ける仕組みを考案することがよいのではないかと考えました」と持論を展開。
そして、具体的なデザインコンセプトは、「トイレ建築を様々な形や色のブロックで構成することにより、閉会後はブロック単位にばらすことができ、公園や広場などに運搬移設しその場に求められるトイレの数や形状に合わせて組み替えることができる計画としました。そのため、ひとつひとつのブロックや単体のトイレブースを見ると簡素なものではありますが、積み木がそうであるように、様々な形や色のブロックを組み合わせることにより、豊かな場を創り出すことを意図しました」と伝えた。
工事金額に関して中抜きの疑惑が持ち上がっている点についても、「公共的な建築であるという性格上、公共が定める厳正なプロセスにのっとって工事金額や施工者が選定されているということをご理解いただければと思います。工事金額に関しては、刊行物単価を基に社会状況も加味し積算された工事予定金額が上限として定められています。ですので予定金額を超えて実態に合わない高額な金額では工事ができない仕組みになっています」と、正当なプロセスに基づいたものであると強調した。
施工者の選定は一般競争入札を行い、「一般的に不特定多数の施工者による工事金額を下げようとする競争が働き工事金額が適正化されます。本建築は、2度の入札で不落不調をきたし、3度目の入札でようやく落札されたという経緯があります。多くのかたから疑義が上がっているように、これが中抜きできるといったような経済的にうまみのある業務であるのならば、2度も不落不調をきたさないでしょうし、そもそもがそのようなことができない仕組みになっています」と疑惑を否定。
最後に、「当初、トイレ5はその予算から万博2億円トイレと称されてきましたが、2回目の入札が不落不調となったという知らせが届く直前に、万博2億円トイレという言葉とともに高額な費用に対する批判が沸き起こり、それを受け、3回目の入札に向けて可能な限り仕様を下げるなどの減額検討を行い予定工事金額を解体費込みで約1.5億円(税抜)まで引き下げたということも付け加えさせていただきます。様々なご意見はあろうかと思いますが、もしよろしければ実際に万博会場に足をお運びいただいて実物をご高覧いただけましたら幸いです」と呼びかけた。ENCOUNT編集部
一級建築士、米澤隆さんのポスト
大阪・関西万博トイレ5に関しまして、部分的に切り取られた建築写真が流出し、安っぽい、工事金額を中抜きしているのではないかといった疑義がおこり、世間をお騒がせしてしまっています。
— 米澤隆 (@yonezawatakashi) March 16, 2025
設計者として説明させていただきます。… pic.twitter.com/3fOllZQKam
設計と施工は別
公共工事は税金を資金源とするため用途に関しては
国民の厳しい目が向けられるのは仕方がありませんが、
理解の足りない批判は的はずれであるばかりか、
関係のない個人を傷つける事態となります。
公共工事の特性等については関係業界団体、メディア等を通して
発信して皆様に理解を深めてもらうことが大事だと思います。
建設業許可関係を仕事とする行政書士も多く存在し、
私達も他人事ではないのではと考えます。
大阪万博のそのものの批判と各施設の建築費用が正しいのかどうかは別問題です。
一級建築士さんの仕事は一定の建築費用に収まり、その他発注者(今回は、公益社団法人
2025年日本国際博覧会協会)からの要望(意匠とか)を達成できるような設計をする事が役割です。
また、工事監理(適正な工事施工を行うかを監督する)こともあるでしょう。
施工会社さんの仕事は設計図面を元に工事費用を算出し入札をし受注をすることで工事をすることができます。
工事費用が適正かどうかは入札によって選別されるし、手抜きかどうかは工事監理、監督の中で写真管理、出来形管理等を通して厳しく見られます。このような管理方法で手抜きかどうかが見抜けるかは議論の余地が残りますが、全国的にある程度統一された管理方法になっていることは留意する必要があります。
中抜きという言葉
また、建設工事の特徴として多重下請構造があります。
下請けの数が増えるほど確かに中抜きの可能性も高まります。
一方で、専門業者(内装屋さん、屋根屋さん、舗装屋さん)という存在、
機動的な労務人工の確保(固定費の低減に寄与)を考えると、
一概に悪とは言えません。
工事規模が大きくなれば、工種も増え専門業者の数も増えます。
とくに建築工事は全体の工程管理や、発注者との調整、全体的な収まり、
近隣住民との対応などを行う必要があり、工事を統括すること自体の「専門業者」としての能力が求められます。
(特に大規模)工事においては専門業者の知恵の結晶であり、末端業者の労働力の積み重ねに他なりません。
必要十分な施工力を工事に合わせて有機的に行うのは下請構造以外には存在しないのではないかと考えます。
「中抜き」という言葉で簡単に切り捨てることはどうか避けていただきたいと思うところです。